※当サイトはAmazonアフィリエイト、Google Adsense、楽天アフィリエイトによる公告を掲載し、収入を得ています。

2020年9月3日木曜日

グランドセイコーの複雑時計への思い[あるいはF-1に参加する意義]

先ほど、グランドセイコーから「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」なる複雑時計が発表されました。

解説記事を書いた広田編集長がテンション高く記事を書いているのが見えるような熱い記事に仕上がっており、書いてある内容は分からんことだらけですが楽しく読んでおりました。


一方、これに対し、「そんなの別にいらないから…」といったネガティブな反応もTwitter上で多かったのも事実。ちょっと意外でした。

別に、ネガティブな感想を持つことを否定いたしませんが、こういう超絶に挑戦することの意義ってこういうことがあるのではないですか?という私の見解をまとめようと思いました。

こういうこと、やれる会社だってことこそが重要だと思うのです。



〇トヨタがWRCやル・マン24時間耐久レースに挑戦する理由

 最近のトヨタ、具体的には現社長のモリゾーさんが就任して以来のトヨタは、クレイジーな挑戦を続けています。 成果を上げているものを言えば、WRCおよびル・マン24時の制覇でしょう。

 では、なぜ、こんなことに挑戦するのか? もし現社長に質問したら、おそらくあの人は「めちゃくちゃ面白そうじゃないですか!?」「勝ったら嬉しいじゃないですか!?」と笑顔で言いそうです。(マイクパフォーマンス込みで)

 もう少し具体的に。

 WRCやF-1に挑戦し、勝つことで、ファンに対して『あなたの車を作っているメーカーは世界一に輝いたことがあるメーカーです』という面白さを提供することができます。あるいは、新規ファンの獲得になります。古くはアイルトン・セナとホンダがタッグを組んでいたのを見て、幼い私はホンダファンになっていました。これってとても重要なことです。

 あるいは、ホンダはレースを動く実験室と評していたはずで、レースで得た知見が市販車に活かされていくことで、ユーザーに還元してゆき、会社としての競争力を高めていくという効果が有ります。

 あるいは、このような面白い挑戦があることで、社内の当該チームは活気付くはずです。(社長だけがやりたいこととかだと、社内のムードは悪くなりますが…) つまりは、社員に対する福利厚生でもあります。

(書いていて思うんだけどさ、こういう立ち回りって元々はホンダがやるべきなんだよねぇ…?)

 

〇セイコーおよびグランドセイコーに思う事

 今回、グランドセイコーは、多くのメーカーや技術者が成し遂げていなかった内容を物にしました。これは、ギネス世界記録のように、設定をこねくり回して世界一と言うみたいなことも、もしかしたら含まれているのかもしれません。ちょっとここは私には分からない。

 少なくとも、多くの人が思っていなかった『(グランド)セイコーはトゥールビヨンを作れる技術がある』とか、『マネじゃなくて新たな試みにチャレンジしている!』というインパクトを与えることが可能な事実であると私は感じます。

 とはいえ、私も含めてほとんどの人には、この凄さがどれほどの事かを理解できずに『ふ~ん』と思うだけに過ぎないとは思います…。さらに、それが何の役に立つのか?と問う人もいるでしょう。今回は試作品という事で市販しないそうですが、売ったとしても凄い値段でしょうし、がんばって量産して、内容を考えても格安!となっても、私は買えないでしょうし、物自体には興味がないので買いません。そういう人の方が多い、というか、欲しいっていう人はほとんどいないでしょう。

 

 しかしここで重要なことは、そういう困難な課題に対するチャレンジを許した土壌が存在するという証明は、非常に有益である、という点です。だって、時計が売れないっていうこのご時世に、部品ひとつでなけなしの利益吹っ飛ばすような物作りするんですよ? それって企業としてはなかなか難しいと思うのですよ。

 さらに、本作で用いられた歯車すべてはMEMS製だったとのことで、どんどんと加工技術が上がっているのだなぁと感じます。そりゃ、セイコーの普及価格帯の一部のムーブメント部品をMEMS製に置き換えが始まるわけです。このような、市販品への具体的なフィードバックというのは少ないでしょうが、チャレンジで得たノウハウが活かされていくことは間違いないでしょう。


 今後のセイコーおよびグランドセイコーのキーポイントは、本作の功績を、どのようにブランド価値の向上につながていくか?ということと、本作で得た知見を、どのように普及価格帯に活かしてゆくか?の2点だと感じます。

 ここまでは擁護する立場を取ってきた私ですが、この2点に取り組まなかったならば、私は手の平をクルッと返す準備ができています(笑)


〇昨今思う事

 潜在的に技術がある日本企業に加えるべきエッセンスは、『クレイジーさ』ではないか?と私は感じています。(すべてに当てはまるとは思いません。) その成功例がトヨタであったり、試験のためにガラスに叩きつけたり純金G-SHOCKを作るカシオであったり…。やべーことをやれる風土はチャレンジングで魅力的な製品を生み出す可能性が高まると私は感じています。あとは、社内で湧き上がるチャレンジの断片を、商品としてどのようにまとめ上げるかは、リーダーの役割だったりします。

 いいじゃないですか、セイコーおよびグランドセイコー。面白いことやってるじゃないですか。このご時世にチャレンジできているって素晴らしいですよ。

 私たちが感じるべきことは、それで良いんじゃないですかね?



※スポンサー