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2018年4月21日土曜日

ETA2824-2という機械

時計に興味が無い人、特に機械時計に興味が無い人にとっては、ETAと言われてもピンときません。

しかし、欧州系の機械時計に少しでも興味を持った人であれば、ETAといえばご存知の方も多いですし、2824-2という数字を見ただけでもその特徴を理解できたりします。

機械の分解をする訳でもない私なりに、ETA2824-2に対するイメージとか、そういうものを少し述べたいと思います。


※追記
ETA2824-2の属する28XXシリーズのラインナップについて別記事でまとめました。2824-2と2824って何が違うの?とか、ムーブメントのサイズなどについてもまとめています。

ETA2824-2とそのシリーズムーブメントについてまとめました
 
ETA2824-2の操作方法や精度についてまとめました
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☆本日の時計

・Archimede パイロットウォッチ


 ETAや2824-2についての基本はざっくりとだけ述べることにしましょう。

 ETAとはスウォッチの系列会社で、ムーブメントの製造を手広く請け負っています。スウォッチというと安価な『あの』イメージですが、実際のところはSwatchグループは非常に巨大で、名だたる有名ブランドを従えています。(参考
 車で考えれば、FIATというと大衆車メーカで、日本ではあまりなじみがありませんが、フィアット・クライスラー・オートモービルズとなりますと、フィアット、アルファロメオ、マセラティ、クライスラー、ジープ、かつてはフェラーリもそのグループでした。そういう、大きなグループのひとつのブランドというか会社がETAという存在です。

 というわけで、ETAはそんなグループ会社にムーブメントを供給する立場にありますが、その供給力を活かしてグループ外のメーカにもムーブメントを供給してきました。(2020年問題などは後で少しだけ触れます)


〇2824-2の立ち位置


 そんなETAのムーブメントの中で、3針日付表示というベーシックなムーブメントが2824-2となります。 その他マイナーチェンジ仕様などがあるようですが、ここでは細かいことは置いておきましょう。

※詳しくは↓
ETA2824-2とそのシリーズムーブメントについてまとめました


 この2824という4ケタの数字は、世界中で最も知名度のある4ケタと言えるかもしれません。腕時計の銘柄だけでいえば、この2824-2をベースにしたムーブメントを搭載したものが最も多いのではないか?と予想されます。(個数だけでいえば、Seiko5=7S26あたりもなかなかと思ったりしますが)

 そんなETAのムーブメントですが、ETAのムーブメントを使用している、という事実に対する感想が人によって大きく異なります。
 ある人は、エタポン(ETAのムーブメントをポンと載せただけ)と称するかもしれませんし、ある人は、スイス製のムーブメントを使用している、と感じるかもしれません。これはある意味で両方正しいです。


 機械時計、特にスイス系の機械時計を調べるとETA2824系のムーブメントの採用事例の多さに驚きます。また、詳しく調べてゆくと、名前は違えどこのムーブメントの特別仕様だったりすることが分かります。とすると、5万円クラスの時計から10万円以上のクラス、2824-2に限らなければもっと高価な時計もETA製のムーブメントが採用されていると知ることになります。ここで、こんなにお手頃なのにスイス製のちゃんとした機械が入っている!と喜ぶか、こんなにも高価なのに汎用機械なのか、というように判断が分かれるわけです。


 しかし、実際のところは値段なりの差があるもので、安価な物は汎用の機械そのままを載せただけ(最初に載せたArchimedeは見た限りそんな感じですね)、高価な物は先ほど特別仕様と書きましたが、自動巻き用ロータがそのメーカのデザインになっていたり、各種仕上げが丁寧だったり、精度が良くできていたりと手が入っています。また、仕上げや精度によって色々なグレードがあり、2824-2と記載されたすべてが同じ物、と断じてしまうのも短絡的すぎます。

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〇2824-2に対する私の印象


 ETA2824-2は、少なくとも『作りやすさ』『精度の出しやすさ』『メンテのしやすさ』『堅牢性』『値段』『採用事例が多い』などのバランスが良いことが採用理由になっていると予想されます。


 私は、この機械が搭載されている時計を2本所有しており、両方とも5年以上は問題なく動作しています。(稼働時間はもっと短い。また最近、Archimedeは時計屋さんでチェックしてもらいましたがOH不要ということで戻ってきました。)

 そんな使用経験から特に悪いイメージは持っていません。日付調整の禁止時間帯に気を付けておけば、ガリッというような不快な、そして機械に負担をかけているような動作は感じません。

 ざっくりと言うと私は2824が好きです、というとニュアンスが違う感じで、より近い感じを選べば『高く評価しています』。(評価しています、と書くと色々な機械を知っている偉い立場っぽく見えてしまいますが、他に良い言葉が思いつかず…)
 その理由は、良い機械(時計に限らず)とは、単純で、頑丈で、作りやすくて、安くて、メンテしやすいものである、と考えているから、で、2824-2はそれにあたると考えるからです。評価している、としたのは、個人的な好みとしては、もっと手が込んでいて、設計者が考え抜いた工夫などが見られるほうが好きかもしれませんが、道具としての機械の完成度は、先に示した項目を満たしていることの方が重要だと考えるためです。



〇2020年問題とは


 ETAについて調べてゆくとぶち当たるのが、2020年問題というキーワードです。色々と裏がありそうなのでここでは省略しますが、ETAが系列ブランド以外へのムーブメントの出荷を止める予定がある、というのが主な内容です。

 実際に止めるかどうかは分かりかねますが、2020年を境にこの2824-2を中心に一切のメンテができなくなる、というのはさすがに無いでしょう。というのも、70年代に生産されていたセイコーの機械時計のムーブメントの部品は、数は確実に減っているとしても、2018年現在でも、ある程度は部品在庫が存在します。期間にして40年です。

 2824-2は流通量も多く、補修部品も多く市場に残っていると考えられます。よって、停止から最低でも20年は問題なくメンテを受けられるのではないかな?と楽観的に考えています。部品が無くなってきてしまっても、市場に多く出回っているムーブメントなので共食い整備も出来るでしょうから、そのような整備も不可能になるのはさらに先になるのではないか?と考えます。




〇最後に



 10年ぐらい前に比べて、ケースを製造してETAのムーブメントを載せるメーカがETA以外のムーブメントを採用するように変わってきているのを感じます。また、ムーブメントも開発製造できるメーカが、低価格帯時計にはETAを使っていたけれど、すべて自社ムーブに移行してきているのも見受けられます。

 このように、小規模メーカは、なんらかメーカ(セリタや他のスイス系ムーブメントメーカ、もしくはセイコーやシチズン=ミヨタ)による代替によって生き残ってゆくのでは?と予想しています。また、そのような小規模で魅力的なメーカが減ってしまうのも悲しいですし、時計メーカの減少でスイスの産業である時計産業が縮小するのもスイス国家としてどう考えているのか?も気になるところです。


 2824-2という機械が採用されていることに対して、ネガティブな印象を持つかポジティブな印象を持つかは、時計を『機械を中心に考える』か、『時計の機能もしくはデザインを中心に考えるか』で大きく変わるように思います。

 2824-2を採用している以上、機械を中心に考えると、他の時計に対して機械の面でアドバンテージはありません。たくさんありますからね。そう考えると、特別でもない普通の機械を載せているだけ、と感じてしまうのも無理はありません。(時計メーカが手を加えているのかどうかは、見ただけでは分かりにくい所もありますから)
 一方、 機能やデザインを中心に考えると、精度もそこそこ良く、時間と日付が分かり、その時計メーカのデザインが好みであれば、信頼のおけるスイス製の機械の入った時計が手に入ると考えることができます。


 これは個人の考え方の違いですが、私は、なんてことないクォーツムーブを積んだTIMEXも好んでいるように、デザインが気に入った時計と、古いセイコーやオールドインターのように機械も気に入った時計とを切り分けて考えて付き合ってゆくことが重要なのではないかなぁと感じます。


※追記
ETA2824-2の属する28XXシリーズのラインナップについて別記事でまとめました。2824-2と2824って何が違うの?とか、ムーブメントのサイズなどについてもまとめています。

ETA2824-2とそのシリーズムーブメントについてまとめました

ETA2824-2の操作方法や精度についてまとめました

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