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2018年6月16日土曜日

欧州を中心とした時計産業に風穴を開ける者は出るのか?[コラム]

仕事の分野や趣味の分野で中国という大国の存在を感じることが、私個人としては多いです。


そんな中国が本気で時計業界に取り組んだらどうなるんだろう、などと夢想します。可能性としてはそんなに高くないと思うのですが、無いことはないオプションのひとつ、ということで書いてみました。

30年後にこの記事が発掘されて『この人、先見性がある!』と評価されるのか、まったく的外れで忘れ去られるかは今からのお楽しみのタイムカプセルです。

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 現在、囲碁の世界で最強の国はどこかご存知でしょうか?

 それは中国です。


 将棋の世界で最近話題になっている藤井氏(すぐに昇段するので段位は省略ですが…)のような天才が、人口が多いからたくさんいる、という簡単な話ではありません。


 中国では、囲碁でトッププロになることは一攫千金のチャンスです。それこそ、実業家として財を成すに近いのです。そのため、子供が生まれたら幼少期から囲碁の勉強をさせて、地区ごとの有力な囲碁の教師の下につかせ、地区トップクラスになり、中央に出てトップを目指して、最終的に世界のトッププロとなる、という流れがあります。また、それを国家が主導して行っています。

 ここに書いたのは上手く行った場合であり、非常にたくさんの子供たちが夢破れて、その後悲惨な状況となる、という、ある種、えげつない実力社会でもあります。


 ここで言いたいのは、ある特定の職種で成功するために、幼少期から人生を決めて取り組む社会が存在するということです。これを時計などの産業の世界に置き換えれば、世界で戦える時計職人に育てるための仕組みがあれば、世界トップクラスの技術者を育てることも『理論的には』可能な社会であると言えます。

 
 中国というと、『大雑把で嘘をついて、マナーの悪い適当な人が多い』というイメージが日本においては多いかもしれません。それは確かに一部では正解です。ただし、それは一部であって、一部しか見ていないと私は考えます。囲碁のように、勤勉で真摯に取り組まなければ絶対に成功できない世界でトップを走る人が存在するということは、そのような人も中国にはいる、とも言えます。



 ここで、もう少し視野を広げます。私はオーディオ関連にも興味を持っているのですが、中国発のオーディオメーカの社長であり、技術者である方を知っています。この方と話をさせてもらった際に印象的だった言葉があります。

『中国製といえば、低価格でクオリティーはそれなり、というイメージがあるが、それを変えたい』

 このような高い意志を持った人が存在します。実際に、中国メーカというと一般的にイメージされる、アフターサービスのルーズさとは違う、真摯な対応が非常に好感を持てるメーカであり、先進的で独創的な技術を投入するメーカとして、現在、世界で認知度を高めています。


 このような高い志を持った資産家が『私のためだけにでも良いから、世界トップの時計を作ろう』と考えて実行に移した時、時計業界のマップは大きく変わるかもしれません。

 最初に書いたように、収入の乏しい農村部から、勤勉で器用な子供たちを、非常に高い給料で手元に置き、残酷とも言えるような実力社会の中で育て上げて技術者を囲い込み、多大な資産を投入した生産設備(最新の工作機械、綺麗な工場、ルールを定めた合理的な工場)を用意して、高い志を捨てずにメーカを興せば、利益が出るかはおいておいて、世界トップクラスの時計を作ることは不可能ではないと思います。(かなり困難な道だと思いますが、可能性の話です)

 もちろん、そのようになる!とは断言できませんが、そんなことはありえない、とは私は思えません。むしろ、低価格品の大量生産が行き詰った時に高付加価値商品に移行してゆくことは必然だとも考えられます。(Huaweiのように、非常に高価なスマホを自社開発し世界に売っている姿を見ると、そういう時代が来ているとも考えられます。)


 とまぁ、結構中国を高く評価している訳なのですが、と同時に、ちゃぶ台返しのようなことも平気でやる、というようなこともあります…。先ほど書いたような志の高い創業者の信念が、後の経営者に引き継がれればよいわけですが、代替わりした途端、コスト削減の利益主義に走るなんてことも目に浮かびます。育てた技術者が別の会社に引き抜かれちゃった、とか、けんか別れしちゃったとか、そんなことも容易に想像できます…。(想像、といいますか、他の業界で聞く話、という感じです)


 世界的に評価されるメーカとなるためには、寿命の長い時計という商品を長きにわたってサポートできる体制がある、という条件があるように思います。そういう点を考えますと5年や10年で中国メーカが時計のトップメーカの一角を為すことはさすがに無いと思いますが、もっと長い目で見るとどうなっているか興味があります。

 あぁ、いや、中国のトップを走っている人々は合理的だから、ブランド価値という醸成するのが面倒なジャンルはスイスその他に任せて、自分たちは利益率の高い先端技術系に投資するという方が、それっぽいか?などと、自分でちゃぶ台をひっくり返しておきます。



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