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2020年1月6日月曜日

どんな時計を「良い」とするか? あるいはRef.16622が好きな理由

先日の日記で書いた通り、年末年始は可能な限りヨットマスターを着用していました。
しみじみと良いなぁ、と思った次第で、このモデルをお勧めしてくれた時計店の店主の意見や、自分の見解を通じて、「良い」って何だろう?とか、答えは1つじゃないとか、そういうことを述べてみたいと思います。



☆本日の時計

・Rolex ヨットマスター Ref.16622



〇行きつけの時計店の店主との話


 よく行く時計屋の店主と、何のとりとめもない話から、時計に関する話まで色々と話をします。話す、というよりも話を聞くと表現した方が良いでしょうか。
 店主は商売としての話はもちろん、自分の『時計感』を語ることも多いです。すべてのお客さんにそれを話すわけではなくて、私のように考え方が大体共有とか理解できている相手にだけ話す(店主の苦手な時計をお客さんが好きだったら、さすがに申し訳ないとかそういうイメージ)ので、かなり極端ではありますが、それはそれで一本筋が通っており、「なるほど、そういう見方もあるのか」と感じることが多いです。
 (その裏には、店主から見て『自分が何と言おうがあなたは好きな時計を選ぶでしょ?』という、ある種の信頼関係があるからですが…)



〇その店主が好きなヨットマスター


 さて、ヨットマスターです。その店主はRef.16622の頃のヨットマスター、特にプラチナ文字盤が非常に好きだそうです。その理由は、強い日差しの下でも劣化しにくいように、わざわざコストを掛けてプラチナで文字盤を製作し、パーティーでも着用できるようなデザイン性を確保しつつ、防水性を高めているという『全方位的な』時計であることが高評価なんだとか。もともとのコンセプトと出来上がってきた時計との整合性や、店主の思うロレックス像(堅牢で実用的かつエレガントな場面にも対応できる)に合致している、と豪語していました。

 その裏には、技術的な裏付けや、他のモデルとの比較などもあるわけなのですが、それらを総合して、私は店主の説には合理性があって説得力があると感じています。
(100m防水ですが、最も泣き所のリューズはシードゥエラーと同じ物で、サブマリーナよりも薄型に仕立てたから水圧による変形に勝てないということで100m防水、とのことでした。言い換えると、ギリギリ100m防水の時計とはレベルが違う、と、その店主が言っていました。)



〇どの視点からの意見であるのか?ということ


 ここで重要なのは『その視点から見た時に”ヨットマスターは素晴らしい”という論理は成り立つ』ということであって、『すべての人にとってヨットマスターが最高の時計として認められるべきである』とは別である、という点です。ここはかなり重要です。

 私は、セイコー5の、特に自分が購入したSNK357(紹介記事もあります)は最高だと感じています。それは、コンパクトさ、デザインのまとまり、コストパフォーマンス、文字盤デザインの面白さ、全体的な仕上げの良さ、ストラップ交換時の懐の深さが高い次元でまとめられていると考えるからです。
 それぞれの要素、例えば「文字盤デザインのバランスは〇〇という理由で良くない」とか、「ここの仕上げは価格を考えても×」とか、具体的な議論の余地はありますが、私の考える良い点が妥当であるならばSNK357は素晴らしいという論理の筋自体は間違っていないはずです。
https://life-with-watches.blogspot.com/2019/07/Seiko5-snk357-review.html

 一方で、もっと高価な、例えば『ロレックスならデイトジャストと比べても勝つ』などと言い始めると、途端に前提や土俵が違い過ぎて、おかしな議論になってしまいます。SNK357を高く評価する私だって、別にそこまで持ち上げるつもりはありません。



〇嗚呼、最強決定戦の無意味なことか…


 SNSやブログなどで『〇〇が最強で他は×』というような表明を見たりします。ランキングなどもあります。しかし本来そこには、前提が必要だと感じます。

 5万円で買える、腕の細い人向けの、シンプルなビジネスウォッチは?とか、そういう前提です。そのような視点をある程度共有しなければ比較検討は出来ないと感じます。コンテンツとしても成り立たないでしょう。少なくとも評価基準が一定であることが重要です。

 ただ、このような前提や基準無く比較されていることが多いように私は感じます。完全なネタコンテンツとして「独断と偏見で!」とか「みんなの視線が釘付け!」とかなら良いのですが、そういう訳でもなく、自分が評価する時計を持ち上げるために、ある視点から見れば素晴らしい時計を、無意味にこき下ろすような悲しい内容も多々あります。


 私も『普遍的な、平均的な見方で述べます』などとは言えません。相当な偏見が混じっているでしょう。しかしまぁ気を付けて書くようにはしています。
 少なくともこのブログをご覧の皆様には、何かを極端に持ち上げるような話を見かけたら、一歩引いてみて、それでもダメならバッサリと切り捨てるぐらいの見方で接した方が、精神衛生上、もしくは知見を蓄えたりする上でも重要ですよ、と提案させていただきます。



〇みんな違ってみんな良い


 私はロレックスが好きです。現行とか古いのとか色々ありますし、好きな理由も色々ですが、今回の本筋とは異なるので横においておきましょう。
 一方で、ロレックスが成金っぽいとか、取り巻く人々が苦手とか感じる人の気持ちも理解しています。


 でもそれって、自分が好きという気持ちに影響を与えることはないと思うんです。

 今回はロレックスをお題にしましたが、これがIWCでもオメガでも、セイコーでもGSでもシチズンでも同じことです。それぞれに良さがあり、その良さに惚れた人がいる。ただそれだけのはずです。

 自分が好きな物、もっというと自分を高く見せるために、他を下げるような言説には耳を傾けない、自分も言わない、ということが、趣味と向き合う上で最も重要だと私は思います。




 あぁ、そうそう。なぜこれが良いのか?とか、なぜこれは良くないのか?を、ケンカではなくて議論することは、知見を増やしたり理解を深めたりする上で重要だとも思っていますよー。

 



私にとっては、このシリーズはこれ!と、時計店の店主の意見に賛同しています。しかしそれは、あくまで私にとっての「これ!」であって、他の人が別の物を指さしていたって、それはそれで良いことですし、面白いことじゃないですかね?



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