※当サイトはAmazonアフィリエイト、Google Adsense、楽天アフィリエイトによる公告を掲載し、収入を得ています。

2018年9月5日水曜日

ETA2824-2とそのシリーズムーブメントについてまとめました

ETA2824-2について以前少し書きましたが、その後すこしずつ調べまして、2824-2とその兄弟となるムーブメントのシリーズについても少し詳しくなってきました。
検索でも、ETA2824-2について検索で来られる方が多く、そういう人にもう少し参考になりそうな情報をまとめました。

取り扱い方法や注意点、私の実使用での精度などは別の記事にまとめようと思います。


関連記事
ETA2824-2の操作方法や精度についてまとめました

※スポンサー


☆本日の時計

・Tudor Prince Date Ref.74000



〇ETA2824とその兄弟ムーブメント


 そもそも、28XXというシリーズ名になっており、(この構造が28シリーズの特徴で…とかは詳しくないですが)、こんな感じのラインナップになっているようです。(専門サイトもしくはETA公式) ここではそこまで詳しく扱わないので、微妙に型番(追番)が間違っている場合がありますのでご容赦ください。

・2801:手巻き・ノンデイト
・2804:手巻き・デイト
・2824:自動巻き・デイト
・2836:自動巻き・デイ(2ヶ国語)・デイト
・2893:自動巻き・デイト・GMT
・2895:自動巻き・デイト・スモールセコンド


以上、すべて28800A/h

 シリーズには、よりハイビートな36000A/hのムーブメントもあります。


↓2893-2ベースのムーブメントが使われています。ボールウォッチはごく一部を除き、ETAムーブメントの自社カスタム品を使用しています。

↑こっちは2824-2ベースです。


〇ETA2824と2824-2の違い



 各種サイトを見ておりますと、2824と2824-2という2つの表記を見ることがあります。実は2824-1も存在します。実はこれらは製造年が違うようです。詳しく見てみましょう。

・2824  :1971-1979
・2824-1:1979-1982
・2824-2:1982-

 つまり、2824-2は2824のマイナーチェンジ版です。先ほどの専門サイトを見ますと、ムーブメント外形サイズは共通で、2824から2824-1へバージョンアップする際にゼンマイのサイズが変更になっていました。2824-1から2824-2へ変わった時の差はこのサイトでは分かりませんでした。見えない細かな修正があったのだと思われます。

 我々が商品を選ぶ中では、現行品であれば2824-2が搭載されているはずであり、特に差は考えなくてよいようです。また、特に厳密性を求めない場合は、2824-2のことを2824と表記している場合が多いようです。


〇ETA2824-2の大きさ


 2824-2および28XXシリーズは、11.5インチ(25.6mm)径で、2824-2は厚さが4.8mmです。これを大きいとか厚いとか評価するには、ケースサイズとの兼ね合いを考える必要があります。

 一般的な紹介サイトを眺めていますと、厚さに関しては『やや厚め』と表記されている場合が多いです。ETA2824-2は頑丈でメンテナンス性も良いのでここまで広く搭載されている、と私は考えていますし実際そのようです。頑丈さやメンテナンス性を確保しようとすると、部品を厚く作ってやるのが手っ取り早く、このあたりは評価と合致します。ただ、それ以外の理由もありそうです。


 デカくて厚い時計はそれはそれで価値があるし魅力もありますが、同時に、薄くスリムにスタイリッシュな時計も評価が高いものです。ムーブメントも自社生産するマニュファクチュールが薄型ムーブメントを搭載してケースを薄く仕上げた、ということをPRするために、どうもこの2824-2の厚さを引き合いに出しているのでは?と、私などはうがった見方をしてしまいます。

 たしかに、ETA2824-2を搭載した腕時計は大きめで、厚めに仕上がっていることが多いです。しかし、ケースバックがスケルトンのモデルや、中を開いている写真を見ますと、ケースの端からかなり余裕がある場合が多く、私などは『もう少し小さく作れるのではないか?』もしくは『もうすこし大きなムーブメントを積めるのでは?』などと思ってしまいます。
 これは言いがかりではなくて(汗)、自分の持っているTudor Prince Date(Ref.74000)はETA2824-2(のファインチューニング版)を搭載しており、ケース径35mm弱、ケース厚10mmちょっとと、昨今のETA2824-2搭載機と比べてコンパクトにできています。当然、Tudorの(もしくはRolex譲りの)オイスターケースが良く出来ている、ということも考えられますが、そんなに防水性が高くないのに妙に腰高(厚い)なモデルを見たりしますと、ちょっともったいないなぁなどと感じたりします。(防水性を高めようとすると大きくなってしまうのは仕方ないとも思いますけど)

 さて、Tudor Prince Dateが35mm弱と申し上げましたが、この蓋を開けた写真などを見ますと、かなりギリギリに搭載されています。このぐらいのサイズ感がETA2824-2には限界のように思えますので、34~36mm、ちょっと大きめで38mmという、往年の(70年代頃の)フォーマル向け紳士時計の王道のサイズに用いられることを前提に設計されたものだということを強く感じます。


※スポンサー


〇ETA2824-2が使われる理由


 現在、2824-2が広く使われる理由は、以下の物だと予想されます。私は時計業界にいるわけではありませんが、工業系に身を置いていて、その設計を考えると、多少の間違いはあっても、大嘘は言っていないという程度には予想できているのではないか?と考えています。


★品質が安定し丈夫

 メーカが恐れるのは、品質のばらつきによる初期不良と、ユーザの不敵な取り扱いによる故障ではないでしょうか? その点で、1970年代から改良しつつ使われている2824-2は、故障しにくいようにバージョンアップがなされているでしょうし、そもそも不安定ならばここまで広く使われるようなことは無かったと容易に想像できます。


★生産量が多く入手性が良い

 生産量が多いと入手性も良く、コスト低減も見込めます。また、市場の部品在庫も多いでしょうから、後のメンテナンスも容易になるでしょう。さらに、部品在庫が多かったりムーブメントの在庫を持ちやすければ、多少トラブル(自社内での生産ミスや部品の加工ミス)があっても対応しやすくなります。


★採用実績が豊富

 採用実績が多いと、ムーブメントと文字盤の位置関係や、針の設計、ケースへのはめ込み部分の設計などを共通化できます。設計の共通化は開発の最適化(スピードアップ)に繋がりますが、同時に、技術力が無いメーカだと、既に設計された決まった部分からある程度余裕(スペース)を取って、オリジナルの形状をはめ込む、ということが考えられます。逆に言うと、結構真剣に設計しなければプリンスデイトのような攻めたケーシングをしにくいということになります。この辺りは、功罪の両方がありそうですね。
 あと、単純に採用実績が豊富ならば、故障しそうな箇所も良く分かっていますし、無理に使ったことがないムーブメントを載せてトラブルになるなら…という思惑もあることでしょう。(買う側の安心感もありますしね)


★シリーズが豊富で設計を共有できる

 シリーズでサイズが共通化されているということは、ケースの設計を流用できるということです。当然、細かな違いはあるでしょうから、そのまま流用は出来ないでしょうが、設計のかなりの部分を使い回せるのはこんなにも安心で開発期間の短縮化になることは有りません。
 極端を言えば、ほとんど設計を共通にして、手巻きモデル、自動巻きモデル、GMT付きモデル、デイデイトモデル、スモセコモデルを用意できるということですから。


〇ETA2824-2はカスタム品が多い


 先ほど、BALL Watchの商品をいくつか掲載しましたが、BALL Watchの多くはETAの28XXシリーズのカスタム品を搭載しています。メーカによって呼び方が異なりますが、ETAから納入された部品をそのまま組み立てれば当然2824-2と表記しますし、部品単位で仕入れて装飾などを施して組み立てても2824-2と表記する場合があります。
 その一方で、BALL Watchのように別の(固有の)名前を与えて表記する場合もあります。このあたりは、『他のメーカとはレベルが違うぐらい手を入れています!』という自信とかの表れなのかもしれません。

 先日、BALL WatchはオリジナルムーブメントとしてETA2824-2ベースのRR7309-Cというムーブメントを発表しました。ベース、というと装飾程度の差と思いがちですが、結構な部品を独自製造し、パワーリザーブを80時間まで拡大したもののようです。変更の必要のない部品をETA製とすることで製造の手間とコスト(工数)を削減しつつ、独自性を出してきているようですね。こうなると、2824-2と言って良いのか?とか、何がベースなのかが分かりにくくなってしまいます。
 メーカ固有の名称のムーブメントでも、実は主要部品は2824-2そのままだったり、大幅に改造された2824-2ということも十分に考えられます。

↑メンテナンスもしやすく、安定した性能も期待できます。このボールウォッチのストークマンなどは、メインのビジネスウォッチとしてお勧めしやすい整った顔立ちで、結構欲しいのですが…。

関連記事
ETA2824-2の操作方法や精度についてまとめました


※スポンサー