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2018年9月17日月曜日

ETA2824-2との付き合い方

ETA2824-2は、数多くの時計に組み込まれて皆様の腕で時を刻んできました。これが初めての機械時計という人も多いことでしょう。

そんな『初めて機械時計を買おうと思うけどETA2824-2っていう機械だそうで、これってどうなの?』という疑問に答えるような記事を書こうと今回考えました。

私が普段取り扱う中で気を使っている点、注意点、操作方法、精度やパワーリザーブ等について、実際に使っている経験をベースにまとめてゆきます。


☆本日の時計

・Archimede Pilot 39(ETA2824-2)



〇はじめに


 以前、ETA2824-2に対する私の印象を述べた記事が案外人気なのと、どう考えても訪問者の期待する内容になっていなかったということで、私の知る限りの取り扱い方法や注意点、精度、使ってきた中での印象などを改めてまとめることにしました。


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〇ETA2824-2の主な機能


・時針 分針 センター秒針
・日付表示
・パワーリザーブ40時間
・デイトジャスト
・ハッキングセコンド
・28800A/h(そこそこハイビート)
・25石
 (17石、21石もあるようですが現行は25石が多い)

 ETAのムーブメントにはグレードがあって、高いグレードのムーブメントになると装飾が凝った物になるようです。ちなみに、Tudor PrinceDateには2824-2のトップグレードが採用されている、とのこと。当然、グレードが高い方が精度も良ければ価格も高い。

 さらにメーカやグレードによって、ある程度組みあがった状態のムーブメントを組み立ててケースに収めるという場合と、部品単位で納入されてきたものをカスタマイズ・組立して搭載する場合があり、ムーブメントの型式だけで保証精度が語れない状態となっています。

 さて、細かくは後に述べるとして、後半で書かない機能についてさっくりと紹介します。
 デイトジャストは0時を超えた瞬間に一気に日付が変わる機能です。調整やギヤの噛み合いによっては数分ずれたりする時もあるようです。セイコーの7S26等は数時間かけてゆっくりと切り替わるので、そういうのに比べれば分かりやすさがあります。
 ハッキングセコンドは、リューズを引いて時分調整状態にすると秒針が止まる機能です。これにより、秒単位の調整ができます。
 28800A/hという振動数は、現代の基準から見れば速くもなく遅くもなく。むしろ、長きにわたり多くの時計に採用されてきた28XX系がこの振動数なので、ひとつの基準になっているような感じもあります。ロービートはロービートの良さ、ハイビートはハイビートの良さがありますが、28800A/hという振動数で長く作られ、品質、精度、耐久性共に評価されている機械ですので、あまり気にしなくてよいのでは?と考えています。



〇日付・時間の変更の方法


 ねじ込み式リューズの場合は、ネジを緩めた状態が手巻きできるポジションです。ねじ込み式でない場合はリューズが押し込まれた状態が手巻きできるポジションです。リューズを時計回り(押し込む方向)に回すと手巻きでゼンマイが巻き上がります。巻き上げはゆっくりと行いましょう。(長い目で見ると耐久性に関わってくる)
 手巻きできるポジションからリューズを引っ張って、1段引くと日付の変更で、2段引くと時分の変更となります。2段引いた時に秒針が止まります。

 日付が変わり始めている時間帯に日付調整をしようとすると、日付のギヤが噛み合っているのを無理に動かすことになり、一発で故障の原因となります。ここさえ気を付ければ、かなり故障は回避できるので注意しましょう。というわけで、安全に失敗しないような手順は以下のようになります。



1.自動巻きの場合は時計を軽く振ったり、
  手巻きできるポジションでリューズを回して少し巻きます。
  動き出す程度で良いです。
  リューズ20周分ぐらいで巻き上がりのはずです。

2.2段引いた状態で、時間を進める。回転方向は反時計回り。
  リューズを引く方向にまわす。それで日付が変更になるまで進める。
  ここが0時になります。

3.ここから更に反時計回りで12時間進める。
  これでお昼の12時。

4.リューズを1つ押し込んで1段引いた状態に戻す。

5.時計回り(押し込む方向)にリューズを回して日付を今の1日前、
  今日が3日なら2日に設定する。

6.秒針が0秒になる瞬間にリューズを引いて2段引いた状態にする。

7.リューズを反時計回りに回して時間を進めて1日進める。
  これで現在の日付になりました。

8.さらに時間を進めて現在時間+1分に合わせる。

9.基準となる時計が0秒を示すときにリューズを戻す。


 改めて文字に起こすと結構面倒ですね(汗)

 日付変更禁止の時間帯(午後9時から午前3時頃が目安です)に日付を変更させないための方法になっています。慣れてくればそこを外して微調整できるようになってきますが、それまでは以上の方法を遵守した方が安全です。(できるだけお昼の12時に針がいる時に日付を調整した方が無難です) 逆に、ここさえ守れば壊れることはめったに無いのでは?と思います。

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〇精度・日差は?


 ETA2824-2の場合、各時計メーカーによって組立・調整・カスタマイズがされていることがほとんどで、『2824-2の精度は…』と一概に語るのが難しいです。というわけで、とりあえず私が持っている個体の精度の傾向を記載しておきます。

 現在、Archimede、Steinhart、Tudorの3本を所有していますが、どれも精度が良く、また安定しています。特に、Tudorのプリンスデイトは精度が良いですね。(ちょっと高いので当然と言えば当然ですが)
 最近導入したワインディングマシンを使って、10日間ほどかけて精度の検証をしてみました。そうしますと、プリンスデイトは平均+1秒程度になりました。Steinhartで、平均+2~3秒となっています。予想より良かったな。

 しかしこれは、ワインディングマシンで、十分に巻きがった状態を維持し、巻き上げ時以外は安静にしているという好条件です。気温も空調を入れている時間が長かったので、比較的安定していました。ですので、実使用ではもう少し日によってばらつくと思います。実際に、私の経験則で言うとプリンスデイトで±3秒程度でいったりきたりでピッタリという時もありますし、Steinhartで±10秒とは言わないけど、5秒以内ではない、という感じです。これも使う人の生活習慣によって結果が変わることも多いです。
 また、精度の調整はゼンマイの力や作用が安定する巻き上がった状態が基準となるため、しっかりと使って巻き上がった状態を維持するのもポイントです。幸い、2824-2は体感上の巻き上げ効率も良いですから、普通に使っていれば十分に巻かれた状態で使えると予想されます。



〇2824-2の耐久性やメンテナンス性は?


 世界で最も修理しやすいムーブメントと断言してよいでしょう。ですので、変な表現ですが、時計のケースと文字盤さえ無事ならば直すことができる、と言えるかもしれません。(そっくり入れ替わっていても良ければ) また、機械時計をメーカ問わずオーバーホールしてくれる店舗であれば問題なくメンテできます。(部品交換が必要だと話が込み入ってきますが)


 耐久性も十分、というのが私の感想です。ETA2824-2を搭載したArchimedeのパイロットウォッチとSteinhartのダイバーズウォッチの2本を購入してから5~6年ほど経っておりますがノントラブルです。



〇パワーリザーブ40時間は十分か?


 完全に巻き上がった状態で土曜に日付が変わった瞬間(0時)に外したとすると、40時間後は日曜16時に止まるということになります。よって、土日外しておいて月曜朝に使うのには不足します。仮に、土日に使用せずに月曜日の朝に使いたい、と考えると巻き足しをしてやる必要があります。


 金曜日の夜に完全に巻かれた状態であればよいですが、実際にはどのような巻き上がり状態かわかりません。私がお世話になっている時計屋さんの話ですと『おおよそ30%は予備と考えた方が良い』とのことです。つまり、1日分24時間+16時間の予備という感じです。(パワリザ60時間なら、2日分48時間+12時間の予備)
 これは、時計を外す前の(例えば夜は)あまり動かず、外すタイミングで十分に巻かれていないことを避けるために、日中に良く巻かれるときに多めに巻いておく、というイメージだそうです。そう考えると、40時間は丸1日外すぐらいは大丈夫、という程度に考えておいた方が良さそうです。


 その考えをもとに、月曜日の朝まで持たせようと考えると、土曜日の間に手巻きか時計を振って巻き足してやる必要がありそうです。これが十分か不十分かは、ご自身の慣れとか習慣に関わってきそうです。



〇巻き上げ効率は? 


 比較が難しいですが、十分な巻き上げ効率だと感じています。少なくとも、デスクワークがほとんどで、そんなに歩かない私ですが、半日以上着用しておけば次の朝に止まっているということは有りません。

 ですので、使用前に動いてさえすれば、そこから着用すれば1日中巻き上げながら使えるという感じで使えています。


〇最後に


 色々と意見はあるでしょうが、私はETA2824-2を信頼しています。超高価な時計に2824-2が搭載されていることについて苦言が書かれていたりしますが、その時計の見た目が好みだったり、保証体制がしっかりしていて、2824-2に対して悪い印象を持っていないのであれば気にしなくてよいのではないかなぁ?とも思います。
 時計を見た目だけで語るのも、中の機械だけで語るのも、どちらも片手落ちのようにも私は思います。少なくとも、ETA2824-2が搭載されているならば、実用十分な信頼性と精度は確保されていると考えて良いのではないか?と思います。
(歩度のズレが大きければ、気の利いた時計店に調整を頼むこともできますしね)



ハミルトンは2824-2を多く用いていて、非常にリーズナブルに魅力的なモデルをたくさんラインナップしています。


また、2824-2より上位の薄型ムーブメントである2892-A2を用いたモデルも多いですね。使用上の注意点などはほとんど同じになります。
こういう、普通によくできた時計って少ないので、もうちょっと人気が出てくれると嬉しいなぁと日々感じています。


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